＜新型コロナ＞料亭「なべ三」も閉店船橋「お店グランプリ」受賞店 - 東京新聞

ふなばしお店グランプリ２０１７受賞時の「なべ三」＝船橋市で（市ホームページから）

　船橋市本町の料亭「なべ三（さん）」が六月末で閉店した。純和風の料亭建築や、四季折々の花を咲かせる中庭などで知られてきた。同市中心部では四月末、老舗割烹（かっぽう）旅館「玉川旅館」が廃業し、八月末には幾つもの宴会場があるＪＲ船橋駅北側の船橋グランドホテルが閉館する。いずれも宴会や祝い事などで多くの市民らが利用、親しまれてきただけに、相次ぐ幕引きに驚きと惜しむ声が上がっている。（保母哲）

　なべ三は、船橋駅南口一帯の商店街南側にある割烹料理店。船橋の名店を表彰する第二回「ふなばしお店グランプリ２０１７」の店舗デザイン部門で、グランプリを獲得した。有限会社なべ三代表の渡辺堅五さん（８３）によると、戦後の一九五〇年ごろ、駅南側で「なべ三食堂」として創業。同所が本店で、現在地に別館を開店した。本店は五九年ごろ閉店し、以来、現在の店舗を「なべ三」として営業してきた。

　二〇一一年の東日本大震災時には、利用客のキャンセルが続き、二カ月間ほど休業。運営を市内の会社・マグフロートに委託し、再開した。広い空間のロビーや中庭が見える和室など、気品と風格を備えた空間が人気を集めてきた。

　渡辺さんやマグフロートによると、以前から契約解除と閉店の話し合いをしており、新型コロナウイルスの影響で客足が遠のいたことも影響したという。同社は新しい店舗の割烹「扇（せん）」を九月、ＪＲ船橋駅北口にオープンさせる。渡辺さんは「八十三歳になったこともあり、ここで区切りを付けようと思った」と話した。

　同じく廃業・閉館する二施設の理由は、玉川旅館が老朽化とコロナ禍などによる利用客減、船橋グランドホテルがコロナ禍での利用客減。三施設の経営者らは「コロナ禍は終息時期が見えないだけに、宴会主体の経営は厳しい」と口をそろえる。

　市民らが宴会や集会などで利用してきた市内の主要三施設が二カ月置きに営業を取りやめる事態となり、船橋商工会議所の篠田好造会頭は「ショックであり、寂しい」。篠田会頭は、市民が会合などで利用するのは、市内のほか東京都内の施設だったが、近年は浦安市や千葉市・幕張地域にもホテルが相次いでオープンしたとして、「選択肢が増えたことが、地元事業者に逆風になってしまった」と嘆いた。